Märchen
7th Story CD
2010年12月15日発売
価格:¥3,800(税込)(初回限定盤)
価格:¥3,000(税込)(通常盤)
価格:¥3,000(税込)(通常盤)
【収録曲】
01.宵闇の唄
――そして、【第七の喜劇】は繰り返され続けるだろう……?
[Und die siebte Komodie wird sich wiederholen
(ウント ディージープてコメディ ヴィルト ジヒ ヴィーダーホーレン)]
[sieben(ジーベン)]
この身を焼き尽くすのは
[sechs(ゼクス)]
浄戒という欺瞞の炎
[funf(フュンフ)]
この心を焼き尽くすのは
[vier(フィアー)]
復讐をよぶ憎しみの炎
[drei(ドライ)]
飢餓と闇 疑心と殺人
[zwei(ツヴァイ)]
イドの底に潜む暗黒の時代
[eins(アインス)]
黒き死の如く連鎖してゆけ
メルツ、地獄に堕ちても
愛してる/愛シテタ
此の物語は虚構である。
然し、其の総てが虚偽であるとは限らない。
[Diese Geschichte ist Fiktion
doch deswegen ist nicht alles an Ihr erfunden.
(ディーゼ ゲシヒテ イスト フィクツィオーン
ドッホ デスべーゲン イスト ニヒト アレス エーア エアフンデン)]
―― そして今、此の地平に宵闇が訪れた……。
[Und jetzt Dunkelheit liegt sich uber die Lande.
(ウント イエッツト デュンケルハイト リークト ジヒ ユーバー ディ ランデ)]
終焉へと疾りだす、夜の復讐劇、第七の地平線。
[Denn die Ende entgegen, eine rechte der sebte horizont 『Marchen』
私は『誰』なのか? 記述が抜け落ちた 真っ白な其の頁(かみ)を 宵闇に染めてゆく
気付けば井戸の底 空を見上げていた 抱いていた可愛い少女[Madchen(メートヒェン)] 口を開いた
「ウフフッ…愛シテルワ、メル。コレデ私タチ、ズットズーット一緒ネ? アハハハハ!」
「復讐シヨウネ?」
「復讐シヨウ」と 彼女が囁く その声色は 何処か懐かしく
何の為かなんて 誰の為かなんて 憶い出せぬ儘 衝動に従った
苦痛に歪む顔 悲痛に喚く声 戦慄と後悔の中で
嗚呼 復讐は罪が故に 粛々と受け入れ給え 嘆いた処でもう手遅れさ
遂に モリから イドヘ至る 喜劇の幕は上がった
七人の女優達よ[Schauspielerinnen(シャウシュピーラリンネン)]!
「さぁ、美しすぎる屍人姫に ご登場願おうか。」
3…2…1…![Drei…Zwei…Eins…und los!]
死せる今 幾ら憾めど 刻は既に遅く
お嬢さん[Fraulein(フロイライン)] 君は独り[Du bist allein(ドゥ ビスト アライン)]
夜の旅路 彷徨う屍体
偶然に出逢った物語(Roman) 嗚呼 此れも運命
小さな口[Kleine Mund(クライナモンド)]
七の苦悩[Sieben Pein(ズィーベン パイン)] 忘れぬ間に紡ぎなさい さぁ――
「さぁ唄ってごらん…」
Kam… Kam…Die Nacht kam…
(カム・・・カム・・・ディ ナハト カム…)
Das Sieben Marchen…Lalalala
(ダス ジーベン メルヒェン)
Kam… Kam…Die Nacht kam…
(カム・・・カム・・・ディ ナハト カム…)
Das Sieben Marchen…Lalalala
(ダス ジーベン メルヒェン)
墓場から始まる 七つの童話[Marchen(メルヒェン)] イドの底に潜む 矛盾の罠
物語の策者は 作為的な嘘で 錯落なる幻想を紡ぐ
光と闇が織り成す世界(モザイク)の中に 愛と憎悪が溢れる
誰かをかつて愛したような気がした
憎しみの焔は揺れ躍る
誰かに愛されたような気もした……
↑ 嗚呼 でもそれは気のせいよ ↑
キミが誰かを怨むなら その復讐に手を貸そう!
Kam… Kam…Die Nacht kam…
Das Sieben Marchen…Lalala…
「黒き死を遡るかのように、旋律は東を目指す」
【アイネ・クライネ・ナハトムジーク】
【ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調作品125/歓喜の歌】
Freude, schöner Götterfunken, Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken,Himmlische, dein Heiligtum!
Deine Zauber binden wieder,was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,wo dein sanfter Flügel weilt.
歓喜よ、神々の麗しき煌めきよ、天上の楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて、崇高な汝(歓喜)の聖所に入る
汝が魔力は再び結び合わせる、時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる、汝の柔らかな翼が留まる所で
【幻想即興曲】
【展覧会の絵「プロムナード」】
愛シイ腕ニ抱カレテ目醒メタ... モリへ至ル井戸ノ中デ...
私ハ殺意ヲ唄ウオ人形... イドへ至ル森ノ中デ...
錏痾蛙遭嗟有合或吾会在唖逢娃婀堊... モリへ至ル井戸ノ中デ...
宵闇ニ踊ル深紅(あか)ト漆黒(くろ)ノ影... イドへ至ル森ノ中デ...
人ヲ殺メテ ... 未来(ひかり)奪ッタ ...
奴ガ裁カレズ ... 生キ延ビルナド ... 赦シハシナイ ...
Dunkelheit liegt sich über die Lande.
(ドゥンケルハイト リークツィヒ ウバー ディ ランダー)
…
月光に照らされて 凶行へ羽ばたいた 旋律が絡み合う夜に
嗚呼 復讐は罪が故に 粛々と受け入れ給え 嘆いたところでもう手遅れさ
終に 宵闇の此の楽団で 憾みを唄いたいなら
屍揮者は君の味方さ!
「さあ、潔く死んでから出直してくれたまえ」
7…6…5…4…3…2…1…!
[sieben sechs fünf vier drei zwei eins los
(ジーベン ゼクス フュンフ フィアー ドライ ツヴァイ アインス ロス!)]
消える影 腕を伸ばせど 闇は既に深く
お嬢さん[Fraulein(フロイライン)] 君の輝き[dein Schein(ダイン シャイン)]
在りし日々は 過去の残照(ひかり)
生前に夢見た楽園(エデン) 嗚呼 然れど忘却
小さな川[Bächlein(ベヒライン)] 緋い葡萄酒[rot Wein(ロトヴァイン)]
乾かぬ間に紡ぎなさい さぁ――
死の歴史を!
「フフッ愛シテルワ、メル
ズットズーット二人デ復讐シ続ケヨウネ
オバカサンノ復讐ヲ手伝ウ事コソ、私タチノ復讐
コレガ永遠ニ続ケラレルワネ
ダッテ、人間ハ憎シミ合ワズニハイラレナイ生キ物ナンデスモノ
オーッホッホッホ・・・・ウフフフフアハハハハハ!」
Marchen…
「ウフフフフフフフフ!」
[Und die siebte Komodie wird sich wiederholen
(ウント ディージープてコメディ ヴィルト ジヒ ヴィーダーホーレン)]
[sieben(ジーベン)]
この身を焼き尽くすのは
[sechs(ゼクス)]
浄戒という欺瞞の炎
[funf(フュンフ)]
この心を焼き尽くすのは
[vier(フィアー)]
復讐をよぶ憎しみの炎
[drei(ドライ)]
飢餓と闇 疑心と殺人
[zwei(ツヴァイ)]
イドの底に潜む暗黒の時代
[eins(アインス)]
黒き死の如く連鎖してゆけ
メルツ、地獄に堕ちても
愛してる/愛シテタ
此の物語は虚構である。
然し、其の総てが虚偽であるとは限らない。
[Diese Geschichte ist Fiktion
doch deswegen ist nicht alles an Ihr erfunden.
(ディーゼ ゲシヒテ イスト フィクツィオーン
ドッホ デスべーゲン イスト ニヒト アレス エーア エアフンデン)]
―― そして今、此の地平に宵闇が訪れた……。
[Und jetzt Dunkelheit liegt sich uber die Lande.
(ウント イエッツト デュンケルハイト リークト ジヒ ユーバー ディ ランデ)]
終焉へと疾りだす、夜の復讐劇、第七の地平線。
[Denn die Ende entgegen, eine rechte der sebte horizont 『Marchen』
私は『誰』なのか? 記述が抜け落ちた 真っ白な其の頁(かみ)を 宵闇に染めてゆく
気付けば井戸の底 空を見上げていた 抱いていた可愛い少女[Madchen(メートヒェン)] 口を開いた
「ウフフッ…愛シテルワ、メル。コレデ私タチ、ズットズーット一緒ネ? アハハハハ!」
「復讐シヨウネ?」
「復讐シヨウ」と 彼女が囁く その声色は 何処か懐かしく
何の為かなんて 誰の為かなんて 憶い出せぬ儘 衝動に従った
苦痛に歪む顔 悲痛に喚く声 戦慄と後悔の中で
嗚呼 復讐は罪が故に 粛々と受け入れ給え 嘆いた処でもう手遅れさ
遂に モリから イドヘ至る 喜劇の幕は上がった
七人の女優達よ[Schauspielerinnen(シャウシュピーラリンネン)]!
「さぁ、美しすぎる屍人姫に ご登場願おうか。」
3…2…1…![Drei…Zwei…Eins…und los!]
死せる今 幾ら憾めど 刻は既に遅く
お嬢さん[Fraulein(フロイライン)] 君は独り[Du bist allein(ドゥ ビスト アライン)]
夜の旅路 彷徨う屍体
偶然に出逢った物語(Roman) 嗚呼 此れも運命
小さな口[Kleine Mund(クライナモンド)]
七の苦悩[Sieben Pein(ズィーベン パイン)] 忘れぬ間に紡ぎなさい さぁ――
「さぁ唄ってごらん…」
Kam… Kam…Die Nacht kam…
(カム・・・カム・・・ディ ナハト カム…)
Das Sieben Marchen…Lalalala
(ダス ジーベン メルヒェン)
Kam… Kam…Die Nacht kam…
(カム・・・カム・・・ディ ナハト カム…)
Das Sieben Marchen…Lalalala
(ダス ジーベン メルヒェン)
墓場から始まる 七つの童話[Marchen(メルヒェン)] イドの底に潜む 矛盾の罠
物語の策者は 作為的な嘘で 錯落なる幻想を紡ぐ
光と闇が織り成す世界(モザイク)の中に 愛と憎悪が溢れる
誰かをかつて愛したような気がした
憎しみの焔は揺れ躍る
誰かに愛されたような気もした……
↑ 嗚呼 でもそれは気のせいよ ↑
キミが誰かを怨むなら その復讐に手を貸そう!
Kam… Kam…Die Nacht kam…
Das Sieben Marchen…Lalala…
「黒き死を遡るかのように、旋律は東を目指す」
【アイネ・クライネ・ナハトムジーク】
【ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調作品125/歓喜の歌】
Freude, schöner Götterfunken, Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken,Himmlische, dein Heiligtum!
Deine Zauber binden wieder,was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,wo dein sanfter Flügel weilt.
歓喜よ、神々の麗しき煌めきよ、天上の楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて、崇高な汝(歓喜)の聖所に入る
汝が魔力は再び結び合わせる、時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる、汝の柔らかな翼が留まる所で
【幻想即興曲】
【展覧会の絵「プロムナード」】
愛シイ腕ニ抱カレテ目醒メタ... モリへ至ル井戸ノ中デ...
私ハ殺意ヲ唄ウオ人形... イドへ至ル森ノ中デ...
錏痾蛙遭嗟有合或吾会在唖逢娃婀堊... モリへ至ル井戸ノ中デ...
宵闇ニ踊ル深紅(あか)ト漆黒(くろ)ノ影... イドへ至ル森ノ中デ...
人ヲ殺メテ ... 未来(ひかり)奪ッタ ...
奴ガ裁カレズ ... 生キ延ビルナド ... 赦シハシナイ ...
Dunkelheit liegt sich über die Lande.
(ドゥンケルハイト リークツィヒ ウバー ディ ランダー)
…
月光に照らされて 凶行へ羽ばたいた 旋律が絡み合う夜に
嗚呼 復讐は罪が故に 粛々と受け入れ給え 嘆いたところでもう手遅れさ
終に 宵闇の此の楽団で 憾みを唄いたいなら
屍揮者は君の味方さ!
「さあ、潔く死んでから出直してくれたまえ」
7…6…5…4…3…2…1…!
[sieben sechs fünf vier drei zwei eins los
(ジーベン ゼクス フュンフ フィアー ドライ ツヴァイ アインス ロス!)]
消える影 腕を伸ばせど 闇は既に深く
お嬢さん[Fraulein(フロイライン)] 君の輝き[dein Schein(ダイン シャイン)]
在りし日々は 過去の残照(ひかり)
生前に夢見た楽園(エデン) 嗚呼 然れど忘却
小さな川[Bächlein(ベヒライン)] 緋い葡萄酒[rot Wein(ロトヴァイン)]
乾かぬ間に紡ぎなさい さぁ――
死の歴史を!
「フフッ愛シテルワ、メル
ズットズーット二人デ復讐シ続ケヨウネ
オバカサンノ復讐ヲ手伝ウ事コソ、私タチノ復讐
コレガ永遠ニ続ケラレルワネ
ダッテ、人間ハ憎シミ合ワズニハイラレナイ生キ物ナンデスモノ
オーッホッホッホ・・・・ウフフフフアハハハハハ!」
Marchen…
「ウフフフフフフフフ!」
02.火刑の魔女
暴食[Völlerei(フェラガイ)]
「罪を祀る歪な祭壇。
神に捧げられた屍。
君は何故、この境界を越えてしまったのか。
…さぁ、唄ってごらん。」
幽かな記憶の 糸を手繰るように
仄昏い森へ 足を踏み入れた
幼い記憶の 途を辿るように
入り組んだ森の 奥へと進んだ
小川を渡り お化けもみの木を左へと
其処に佇む 私の生家
『物心ついた時には、既に父の消息は不明で、
私と母は何時も二人、とても貧しい暮らしだった。
井戸に毒を入れた等と、謂われなき罪で虐げられる事も多く、
私にとって友達と言えるのは、森の動物達だけだった……。』
「出てけー!出てけ!」
「出てけよ!」「気持ち悪いんだよ!」
「わっ…。」
「ついてこないでよー!」
「魔女ー魔女ー!」
それでも 嗚呼 ねぇ お母さん[mutti(ムッティ)] 私は幸せだったよ
その理由を ねぇ 知ってた? 貴女が一緒だったから
それなのに 何故 母は 私を捨てたのか?
どうしても それが 知りたくて……
小さな私を拾ってくれたのは 大きな街にある修道院だった
けれど 激しく吹き荒れた改革の嵐と
新教徒達の手によって 嗚呼 無惨にも破壊された
「堕落した聖職者共を一掃するのだ!
形ばかりの聖堂台を打ち壊し、真の信仰を我らの手で!!」
「きゃー!やめてー!やめて!お願い!やめて!」
人生は数奇のもの 運命は判らないから
ひとつの終わりは 新しい始まりと信じて 勇気を持って
積年の疑問を 解く為に 故郷を探す 旅を始めた
小川を渡り お化けもみの木を左へと
其処に佇む 私の生家
『私の来訪を待っていたのは、石のように歳を取った老婆で、
まるで見知らぬその女性が、母であるとは俄には信じ難く、
娘<わたし>であると気付く事もなく、唯、食料を貪る母の瞳は、
既に正気を失っているように思えた。
そして……。』
(「ただいま。お母さん。えっ?お母さん?」
「おお、イエズスのお使いの方、よく来て下さった!」
「大丈夫ですか?」「はぁ!」
「お口に合いましたか?」
「いくらでも食べられるのぉ!」
「そんな、私は誰だかわからないのですか!?」
「何訳わからぬこといってるんだい!お前も私を差別するのかい?!
寄越せ!もっと食い物を寄越せ!」
「ひぃッやめて…。いやあぁぁ!!」)
改宗したけれど時は既に遅く、
一人の食い扶持さえもう侭ならなかった。
懺悔を嗤う逆十字。
祈りは届かない。
赦しも得られぬまま、罪だけが増えてゆく……。
「成る程…
それで君は、奉られてしまった訳だね?不本意ながら…
少々時間は掛かるが、子供の憾みは子供が晴らすものさ。
宜しいかな?
さぁ、復讐劇を始めようか。」
森に置き去りにされた 可哀想な兄妹(子供達)
捨てられた子の 悲しい気持ちは 痛いほど解るわ
嗚呼 鳥達を操り パン屑の道標を消し
真雪のように 真っ白な鳥に 歌わせて誘った
(「パン屑が…食べられている」
「あっ!ねぇ、お兄ちゃん、面白い鳥がいるわ!」
「本当だ。追いかけてみよう!」)
「見て、【Hansel】お兄ちゃん。ほら、あそこに家があるわ!」
「でも、【Gretel】それは、怖い魔女の家かも知れない……けど」
「けど?」
「腹ぺこで……死ぬよりましさ!」「死ぬよりましね!」
「「誰かいませんか?」」
「おやまぁ、可愛いお客様だこと。腹が減ってるのかい?
さぁ、中へお入り」
「屋根は焼き菓子[Lebkuchen(レープクーヘン)]。窓は白砂糖。
お菓子の美味しい家を、栫えてあげようかねぇ!」
嗚呼 遠慮はいらないよ
子供に腹一杯食べさせるのが 私のささやかな夢だった
嗚呼 金貸しだった夫は 生きては帰らなかったけど
幾許かの遺産を託けてくれていた……
老婆の好意に 無償の行為に 甘えた兄妹(二人)は 食べ続けた
少女はある日 丸々太った 少年を見て 怖くなった
「うまい!うまい!グレーテルも食べなよ!」
「うんっ!おいしいね!お兄ちゃん!」
「うまい、うまい、」
「お兄ちゃん!?」
「グレーテル、要らないんだったらお前の分もおれにくれよ」
「嗚呼、老婆は魔女で、二人を食べちゃう心算なんだわ!」
殺られる前に 殺らなきゃ ヤ・バ・イ!
背中を ドン! と 蹴飛ばせ!
「ギャーァァ!!!」
「私達を食べようなんて、そうはいかないんだからね」
「すごいぞグレーテル。これで魔女もおしまいさ」
「隣のトーマスにも、自慢してやらなきゃね」
「ああ、悪い魔女は火あぶりさ。これでお宝は」
「「私(僕)達のもの」」
「おーいトムー」
「トムー」
「よおハンス!ってお前何でそんな太ってんだ?」
「「じゃじゃーん」」
「うわあ、ひょー!こいつはついてるぜ!」
「ははは!」
「森に住む孤独な老婆は、全て魔女なんだそうだよ」
「もう、子供なんて図々しくて嘘吐きで、私は大嫌い」
「罪を祀る歪な祭壇。
神に捧げられた屍。
君は何故、この境界を越えてしまったのか。
…さぁ、唄ってごらん。」
幽かな記憶の 糸を手繰るように
仄昏い森へ 足を踏み入れた
幼い記憶の 途を辿るように
入り組んだ森の 奥へと進んだ
小川を渡り お化けもみの木を左へと
其処に佇む 私の生家
『物心ついた時には、既に父の消息は不明で、
私と母は何時も二人、とても貧しい暮らしだった。
井戸に毒を入れた等と、謂われなき罪で虐げられる事も多く、
私にとって友達と言えるのは、森の動物達だけだった……。』
「出てけー!出てけ!」
「出てけよ!」「気持ち悪いんだよ!」
「わっ…。」
「ついてこないでよー!」
「魔女ー魔女ー!」
それでも 嗚呼 ねぇ お母さん[mutti(ムッティ)] 私は幸せだったよ
その理由を ねぇ 知ってた? 貴女が一緒だったから
それなのに 何故 母は 私を捨てたのか?
どうしても それが 知りたくて……
小さな私を拾ってくれたのは 大きな街にある修道院だった
けれど 激しく吹き荒れた改革の嵐と
新教徒達の手によって 嗚呼 無惨にも破壊された
「堕落した聖職者共を一掃するのだ!
形ばかりの聖堂台を打ち壊し、真の信仰を我らの手で!!」
「きゃー!やめてー!やめて!お願い!やめて!」
人生は数奇のもの 運命は判らないから
ひとつの終わりは 新しい始まりと信じて 勇気を持って
積年の疑問を 解く為に 故郷を探す 旅を始めた
小川を渡り お化けもみの木を左へと
其処に佇む 私の生家
『私の来訪を待っていたのは、石のように歳を取った老婆で、
まるで見知らぬその女性が、母であるとは俄には信じ難く、
娘<わたし>であると気付く事もなく、唯、食料を貪る母の瞳は、
既に正気を失っているように思えた。
そして……。』
(「ただいま。お母さん。えっ?お母さん?」
「おお、イエズスのお使いの方、よく来て下さった!」
「大丈夫ですか?」「はぁ!」
「お口に合いましたか?」
「いくらでも食べられるのぉ!」
「そんな、私は誰だかわからないのですか!?」
「何訳わからぬこといってるんだい!お前も私を差別するのかい?!
寄越せ!もっと食い物を寄越せ!」
「ひぃッやめて…。いやあぁぁ!!」)
改宗したけれど時は既に遅く、
一人の食い扶持さえもう侭ならなかった。
懺悔を嗤う逆十字。
祈りは届かない。
赦しも得られぬまま、罪だけが増えてゆく……。
「成る程…
それで君は、奉られてしまった訳だね?不本意ながら…
少々時間は掛かるが、子供の憾みは子供が晴らすものさ。
宜しいかな?
さぁ、復讐劇を始めようか。」
森に置き去りにされた 可哀想な兄妹(子供達)
捨てられた子の 悲しい気持ちは 痛いほど解るわ
嗚呼 鳥達を操り パン屑の道標を消し
真雪のように 真っ白な鳥に 歌わせて誘った
(「パン屑が…食べられている」
「あっ!ねぇ、お兄ちゃん、面白い鳥がいるわ!」
「本当だ。追いかけてみよう!」)
「見て、【Hansel】お兄ちゃん。ほら、あそこに家があるわ!」
「でも、【Gretel】それは、怖い魔女の家かも知れない……けど」
「けど?」
「腹ぺこで……死ぬよりましさ!」「死ぬよりましね!」
「「誰かいませんか?」」
「おやまぁ、可愛いお客様だこと。腹が減ってるのかい?
さぁ、中へお入り」
「屋根は焼き菓子[Lebkuchen(レープクーヘン)]。窓は白砂糖。
お菓子の美味しい家を、栫えてあげようかねぇ!」
嗚呼 遠慮はいらないよ
子供に腹一杯食べさせるのが 私のささやかな夢だった
嗚呼 金貸しだった夫は 生きては帰らなかったけど
幾許かの遺産を託けてくれていた……
老婆の好意に 無償の行為に 甘えた兄妹(二人)は 食べ続けた
少女はある日 丸々太った 少年を見て 怖くなった
「うまい!うまい!グレーテルも食べなよ!」
「うんっ!おいしいね!お兄ちゃん!」
「うまい、うまい、」
「お兄ちゃん!?」
「グレーテル、要らないんだったらお前の分もおれにくれよ」
「嗚呼、老婆は魔女で、二人を食べちゃう心算なんだわ!」
殺られる前に 殺らなきゃ ヤ・バ・イ!
背中を ドン! と 蹴飛ばせ!
「ギャーァァ!!!」
「私達を食べようなんて、そうはいかないんだからね」
「すごいぞグレーテル。これで魔女もおしまいさ」
「隣のトーマスにも、自慢してやらなきゃね」
「ああ、悪い魔女は火あぶりさ。これでお宝は」
「「私(僕)達のもの」」
「おーいトムー」
「トムー」
「よおハンス!ってお前何でそんな太ってんだ?」
「「じゃじゃーん」」
「うわあ、ひょー!こいつはついてるぜ!」
「ははは!」
「森に住む孤独な老婆は、全て魔女なんだそうだよ」
「もう、子供なんて図々しくて嘘吐きで、私は大嫌い」
03.黒き女将の宿
強欲[Geiz]
「宵闇の風に揺れる 愉快な黒いブランコ」
ぶらん。ぶらん。風吹きゃ ぶらん。
踊るよ、黒いぶらんこ……。
「君は何故この境界を越えてしまったのか
さぁ、唄ってごらん」
おらはまずすう村に生まれ いっづも腹をすぐせてた
おがすででぎた家があったら あったらほんどぉに良がんべなぁ
「人はすんごによってのみすぐわれる」と
偉い坊さんが言っだどさ 本っでいうのに書いだどさ
神様が助けてぐれるなら たらふぐ飯<おまんま>ぐえっぺな
おとおたづは鎌を手に でがげて行っだ
その日の空の色 かなすう程にあがぐ……
「村のために!うぅ!」
「これも、全て家族のためだ、みんな、行くどー!」
「必ず帰ってくるからな」
「心配さぁするでねぇぞー!」
「別れはいつか訪れるもんだぁ」
「大変だー!ナダラギが近くまできたどー!」
「なに!?お前ら行くぞー!」
「ゲーフェンバウアー将軍に、続けェ!」
「おおー!」
大砲が吼えりゃ 『翼もないのに』 人が空を飛び 『軽やかに高く』
戦争とは名ばかりの 唯の殺戮さ
嗚呼 武器が農具じゃ 『残念だけれど』 射程が短か過ぎた 『残酷な程に』
戦争とは名ばかりの 唯の殺戮さ
村の働き手は 結局その殆どが 二度とは帰って来なかった……
「そすておらは、とおぐのまづへと…(売られだ。)」
年齢不詳。性別も不詳。出遇えば不祥。正に人生の負傷。
胡散臭い女将が、夜な夜な暗躍する宿屋。
その名を【黒狐亭】という!
(Von unbekanten Alter und Geschlecht.
Begegten verheiβen Pech. an Leben ist mehr schlecht als recht.
Der Gasthof der Verdächte "黒狐亭".)
「薹が立って久しい、クソババアが独り。
図太く生きてゆくには、綺麗事ばかりじゃ……ないわよっ!」
「愛した男は、皆儚く散った。
運が悪いのか、時代が悪いのか……」
「嗚呼【Mäntzer】(ミュツァー)は気高く、
【Hutten】(フッテン)は華麗で、
【Sickingen】(ジッキンゲン)は、嗚呼、誰よりも――
激しかったわ❤」
「おう、邪魔をするぞ」
「邪魔するなら帰れ」
「んな!」
「おがみさん、おがみさん!おい、クソババア!」
「なぁにぃよぉ」
「お客様がお待ちになってやがりますでよ」
「もうぅ、うるさいわねぇ!
今せっかく良いところだったのにぃ!」
「あのなぁ…!」
「あんたのような田舎っぺ、(「なっ!?」)
拾ってやったのは、(「んあ?」)
何処の誰かしら?
口の利き方にゃ……気をつけなさいっ!」
「わーがったっつってんべ」
「さぁさ、旦那、どうぞ。温い麦酒[Bier(ビーア)]は如何?」
「うーん。おーっとっとと。」
「うめぇだよ」
「自慢の最高な肝臓料理[gute Leber Kochen(グーナレバーカッヘ)]、ご用意致しましょう」
「アーショイッス!」「おぉう」「こっら!」
「ふむ、なるほど、うん、ようし貰おう!」
宵闇へ 飛び出した 女将を睨み
客は怒り おらは平謝り
「こら!」
「ばっちぃ」
「オイオイ、どうなってるんだ!?仮にもここは酒場だろう!?」
「何言ってんだぁ、ここは宿場だぁ。すまねぇなぁ」
――そして小一時間後…
くうぎ読まず 出戻った おがみの手には
しょぐざいの すんせんなしょぐざい
「みーなさん!」
「出た!さっきのあいつだ!?」
「産地直送の、レバーよお!オーッホッホッホ!」
「そりゃ、すごい!」
その味に 怒り狂った客も 機嫌を直した
その事で 味を占めた女将の 暴走は続く……
「いやあ美味かった!ああ、素晴らしい!」
「んだんだ。」
「こんな田舎でここまでの料理が食えるとは、ハッハッハ」
「こんな田舎で悪かったな」
「オーッホッホッホッホ!
屍体が無いなら作ればいいじゃなーい?
おらもう嫌だあ、貧しいのはあ…ひもじいのは…
あんなむずめな思いはもういやあああぁ!」
「必死に生ぎだげど、ロクなごとがねぇ。
結局、ずんせいって何だべ…よぐわがんねぇ……」
「成る程、それで君は潰された訳だね。残念ながら身に覚えのない罪で。
それが事実であれ、虚構であれ、盗られたものは取り返すものさ。
さぁ、復讐劇を始めようか!」
とんとん とんとん 扉をとんとん
とんとん とんとん 扉をとんとん
とんとん とんとん 扉をとんとん
躍るよ黒い
「おらの肝臓を返せぇぇ…」
ぶ ら ん こ
「ぎゃあああああああぁ!」
「楽して儲けようとしても、中々上手く行かないものだねぇ」
「あんな杜撰な計画、上手く行く方がおかしいのよぉ。ウフフフフフ!」
「宵闇の風に揺れる 愉快な黒いブランコ」
ぶらん。ぶらん。風吹きゃ ぶらん。
踊るよ、黒いぶらんこ……。
「君は何故この境界を越えてしまったのか
さぁ、唄ってごらん」
おらはまずすう村に生まれ いっづも腹をすぐせてた
おがすででぎた家があったら あったらほんどぉに良がんべなぁ
「人はすんごによってのみすぐわれる」と
偉い坊さんが言っだどさ 本っでいうのに書いだどさ
神様が助けてぐれるなら たらふぐ飯<おまんま>ぐえっぺな
おとおたづは鎌を手に でがげて行っだ
その日の空の色 かなすう程にあがぐ……
「村のために!うぅ!」
「これも、全て家族のためだ、みんな、行くどー!」
「必ず帰ってくるからな」
「心配さぁするでねぇぞー!」
「別れはいつか訪れるもんだぁ」
「大変だー!ナダラギが近くまできたどー!」
「なに!?お前ら行くぞー!」
「ゲーフェンバウアー将軍に、続けェ!」
「おおー!」
大砲が吼えりゃ 『翼もないのに』 人が空を飛び 『軽やかに高く』
戦争とは名ばかりの 唯の殺戮さ
嗚呼 武器が農具じゃ 『残念だけれど』 射程が短か過ぎた 『残酷な程に』
戦争とは名ばかりの 唯の殺戮さ
村の働き手は 結局その殆どが 二度とは帰って来なかった……
「そすておらは、とおぐのまづへと…(売られだ。)」
年齢不詳。性別も不詳。出遇えば不祥。正に人生の負傷。
胡散臭い女将が、夜な夜な暗躍する宿屋。
その名を【黒狐亭】という!
(Von unbekanten Alter und Geschlecht.
Begegten verheiβen Pech. an Leben ist mehr schlecht als recht.
Der Gasthof der Verdächte "黒狐亭".)
「薹が立って久しい、クソババアが独り。
図太く生きてゆくには、綺麗事ばかりじゃ……ないわよっ!」
「愛した男は、皆儚く散った。
運が悪いのか、時代が悪いのか……」
「嗚呼【Mäntzer】(ミュツァー)は気高く、
【Hutten】(フッテン)は華麗で、
【Sickingen】(ジッキンゲン)は、嗚呼、誰よりも――
激しかったわ❤」
「おう、邪魔をするぞ」
「邪魔するなら帰れ」
「んな!」
「おがみさん、おがみさん!おい、クソババア!」
「なぁにぃよぉ」
「お客様がお待ちになってやがりますでよ」
「もうぅ、うるさいわねぇ!
今せっかく良いところだったのにぃ!」
「あのなぁ…!」
「あんたのような田舎っぺ、(「なっ!?」)
拾ってやったのは、(「んあ?」)
何処の誰かしら?
口の利き方にゃ……気をつけなさいっ!」
「わーがったっつってんべ」
「さぁさ、旦那、どうぞ。温い麦酒[Bier(ビーア)]は如何?」
「うーん。おーっとっとと。」
「うめぇだよ」
「自慢の最高な肝臓料理[gute Leber Kochen(グーナレバーカッヘ)]、ご用意致しましょう」
「アーショイッス!」「おぉう」「こっら!」
「ふむ、なるほど、うん、ようし貰おう!」
宵闇へ 飛び出した 女将を睨み
客は怒り おらは平謝り
「こら!」
「ばっちぃ」
「オイオイ、どうなってるんだ!?仮にもここは酒場だろう!?」
「何言ってんだぁ、ここは宿場だぁ。すまねぇなぁ」
――そして小一時間後…
くうぎ読まず 出戻った おがみの手には
しょぐざいの すんせんなしょぐざい
「みーなさん!」
「出た!さっきのあいつだ!?」
「産地直送の、レバーよお!オーッホッホッホ!」
「そりゃ、すごい!」
その味に 怒り狂った客も 機嫌を直した
その事で 味を占めた女将の 暴走は続く……
「いやあ美味かった!ああ、素晴らしい!」
「んだんだ。」
「こんな田舎でここまでの料理が食えるとは、ハッハッハ」
「こんな田舎で悪かったな」
「オーッホッホッホッホ!
屍体が無いなら作ればいいじゃなーい?
おらもう嫌だあ、貧しいのはあ…ひもじいのは…
あんなむずめな思いはもういやあああぁ!」
「必死に生ぎだげど、ロクなごとがねぇ。
結局、ずんせいって何だべ…よぐわがんねぇ……」
「成る程、それで君は潰された訳だね。残念ながら身に覚えのない罪で。
それが事実であれ、虚構であれ、盗られたものは取り返すものさ。
さぁ、復讐劇を始めようか!」
とんとん とんとん 扉をとんとん
とんとん とんとん 扉をとんとん
とんとん とんとん 扉をとんとん
躍るよ黒い
「おらの肝臓を返せぇぇ…」
ぶ ら ん こ
「ぎゃあああああああぁ!」
「楽して儲けようとしても、中々上手く行かないものだねぇ」
「あんな杜撰な計画、上手く行く方がおかしいのよぉ。ウフフフフフ!」
04.硝子の棺で眠る姫君
嫉妬[Neid(ナイド)]
「硝子の棺 眠る姫君
君は何故この境界を越えてしまったのか?
さあ、唄ってごらん…」
真雪の肌は白く 黒檀の髪は黒く
血潮のように赤い唇 冬に望まれ産まれた私
柔らかな温もり 過ぎ去りし春の匂い
甘く切ない痛み遺して 生母<はは>は遠くへ逝ってしまった……
「鏡よ鏡……此の世界で一番、美しいのは、誰なのかしら?」
「其れは貴女――《王妃様》[die Königin(ディケニギン)]!」
「ホッホッホッホッホッホッホ!」
継母は冷たく 亡母の愛を憶いだし
独り抱きしめ虚像と踊る 月日を重ね娘に成った……
「鏡よ鏡……此の世界で一番、美しいのは、誰なのかしら?」
「其れは貴女――《王妃様》[die Königin(ディケニギン)]でしたが……
今では彼女――《雪白姫》[Schneewittchen(シュネーヴィッチェン)]!」
(私 ――《雪白姫》[Schneewittchen(シュネーヴィッチェン)])
「キィィィィー!」
「おーおっおっおっ はぁはぁはぁ…姫ェぇぇ!」
「こっち来ないでー!じいや!無理ー!」
「おおおおー!待ってくれー!姫ェ!」
「狩人の爺やに 追いかけられ 森の奥へと逃げる……」(「っひ、っひひひひ姫!」)
「ワシだって本当は、こんなこと……したくなかったんじゃよ」(「あっ!」)
「だったら、どうして?」
「姫よ、お妃様にゃ逆らえぬ」
「お願い、助けて!」
「姫よ、殺すワシも辛いんじゃよ」
「それなら、私もうお城(うち)には、帰らないと約束するわ」
「それなら、ワシにも策がある。猪殺して身代わりにしよう!」
「うんっ!」
――そして、私を待っていたのは……。
宵闇の迫る影が 進む道を呑み込んでゆく
迷い込んだ見知らぬ森の 小さな可愛いお家
「あー!おいらの寝床で誰か寝とるんげん!」
「「マジで!?」」
「死んでがると?」
「いんや、まだ生きてりっひ!」
「皆、どうするんべるく?」
「「うーん」」
「こういう場合は大体王子様が接吻すればいいーねん」
「「おおー!」」「ひゃーあ!」
「で、誰かこの中に王子様はいるしゅたいん?」
「いや、この際おじ様でもいいんじゃね?」
「「それだ!」」
「「んーっ」」
「ぐーてん☆もるげん!」
「「おーお!」」
寝起きも超スッキリな美少女、私の目覚めを待っていたのは、
可笑しな訛りを持った七人の愉快な小人達で、
その後、狡賢い継母<はは>の謀略により、幾度か死にかけたが、
その都度、奇跡的に復活し続けたのであった!
「貴様、何者だ」
「私の名はイドルフリート・エーレンベルク、イドと呼んでくれ給え」
「ふざけるな、コルテスはどこだ!」
「キミのような低能に、教える義理は無い」
「うるさい!」
「もし、」
「ごめんね、お婆さん。
どんな人も、家へは、入れちゃいけないのよ……」
「お留守番かい? 偉いねぇ!
さぁ、真っ赤に熟れてる林檎[Apfel(アッフェル)]。お前さんに1つあげよう、ほれ!」
「ごめんね、お婆さん。
いらない。私何も、貰っちゃいけないのよ……」
「あらまぁ、心配症だねえ!
そうとなりゃ、抱いてる疑惑[Zweifel(ツヴァイフェル)]。この婆と2つに分けよう!」
抗えない 誘ってる悪魔[Teufel(トォイフェル)] 7つめの罪は蜜の味
「いただきます…。」
「いただきまーす!…うっ」
「キッヒッヒッヒ!」
「鏡よ鏡……此の世界で一番、美しいのは、誰なのかしら?」
「其れは貴女――《王妃様》[die Königin(ディケニギン)]!」
「ホッホッホッホッホッホッホ!」
「成る程。それで君は騙されたわけだね?
ならば、ある男の特殊な性癖を君の復讐に利用してみようか
さあ、もう暫し。運命の相手は夢の世界で待つものさ」
僕の理想の花嫁は 何処に居るのだろう?
嗚呼 西も東も 北も南も 雨にも負けず 風にも負けず
捜したけれど 見つからないのさ
未来に開く 少女も 過去に開いた 老婆も
蕾も花も 生きとし生ける 全ての女性(ひと)を 愛でても尚 見つからない
宵闇の迫る陰が 進む道を呑み込んでゆく
迷い込んだ見知らぬ森の 小さな可愛いお家
儘、閉ざされた硝子の中で、
眠るように死んでる君は、
誰よりも、嗚呼、美しい。
やっと、見つけたよ!
「《小人》[Zwerge(ツヴェルク]達よ、その死体を私に譲ってはくれないかな?」
「こいつ」
「どう」
「見ても」
「王」
「子」
「様」
「だし」
「「「いいんじゃね?」」」
「さあ、もうすぐあのフードがやらかすぞ」
「お前たち、くれぐれも慎重に運ぶように」
「「はい、殿下!」」
「心の準備はよろしいかな?お姫様」
「うお!」「ああーっ!」
「ぐーてん☆もるげん!」
「「うわあー!」」
「さあ、復讐劇の始まりだ!」
魔性のは肌は白く 黒曜の髪は黒く
焔のように赤い唇
妬いたのが お前の罪なら
灼けた靴で――
死 ぬ 迄 踊 れ !
「さ!ほれ!」
「あうっ…は、ひぃ」
「きゃははっ! あははっ! あーはっはっは!
なーにそれえ! もっと上手に踊ってくださらない?
せっかくの可愛い娘の婚礼なのよお? あーはっはっは!」
「ああ!あちちち!アァー!アチチ!!あ、あぁーーー!!」
「なんてことだ…」
「鏡よ鏡、メル鏡。この世界で一番可愛いのは誰かしら?ウフフ!」
「勿論、それはエリーゼ姫さ」
「本当!?嬉しい!アハハハハ!」
「硝子の棺 眠る姫君
君は何故この境界を越えてしまったのか?
さあ、唄ってごらん…」
真雪の肌は白く 黒檀の髪は黒く
血潮のように赤い唇 冬に望まれ産まれた私
柔らかな温もり 過ぎ去りし春の匂い
甘く切ない痛み遺して 生母<はは>は遠くへ逝ってしまった……
「鏡よ鏡……此の世界で一番、美しいのは、誰なのかしら?」
「其れは貴女――《王妃様》[die Königin(ディケニギン)]!」
「ホッホッホッホッホッホッホ!」
継母は冷たく 亡母の愛を憶いだし
独り抱きしめ虚像と踊る 月日を重ね娘に成った……
「鏡よ鏡……此の世界で一番、美しいのは、誰なのかしら?」
「其れは貴女――《王妃様》[die Königin(ディケニギン)]でしたが……
今では彼女――《雪白姫》[Schneewittchen(シュネーヴィッチェン)]!」
(私 ――《雪白姫》[Schneewittchen(シュネーヴィッチェン)])
「キィィィィー!」
「おーおっおっおっ はぁはぁはぁ…姫ェぇぇ!」
「こっち来ないでー!じいや!無理ー!」
「おおおおー!待ってくれー!姫ェ!」
「狩人の爺やに 追いかけられ 森の奥へと逃げる……」(「っひ、っひひひひ姫!」)
「ワシだって本当は、こんなこと……したくなかったんじゃよ」(「あっ!」)
「だったら、どうして?」
「姫よ、お妃様にゃ逆らえぬ」
「お願い、助けて!」
「姫よ、殺すワシも辛いんじゃよ」
「それなら、私もうお城(うち)には、帰らないと約束するわ」
「それなら、ワシにも策がある。猪殺して身代わりにしよう!」
「うんっ!」
――そして、私を待っていたのは……。
宵闇の迫る影が 進む道を呑み込んでゆく
迷い込んだ見知らぬ森の 小さな可愛いお家
「あー!おいらの寝床で誰か寝とるんげん!」
「「マジで!?」」
「死んでがると?」
「いんや、まだ生きてりっひ!」
「皆、どうするんべるく?」
「「うーん」」
「こういう場合は大体王子様が接吻すればいいーねん」
「「おおー!」」「ひゃーあ!」
「で、誰かこの中に王子様はいるしゅたいん?」
「いや、この際おじ様でもいいんじゃね?」
「「それだ!」」
「「んーっ」」
「ぐーてん☆もるげん!」
「「おーお!」」
寝起きも超スッキリな美少女、私の目覚めを待っていたのは、
可笑しな訛りを持った七人の愉快な小人達で、
その後、狡賢い継母<はは>の謀略により、幾度か死にかけたが、
その都度、奇跡的に復活し続けたのであった!
「貴様、何者だ」
「私の名はイドルフリート・エーレンベルク、イドと呼んでくれ給え」
「ふざけるな、コルテスはどこだ!」
「キミのような低能に、教える義理は無い」
「うるさい!」
「もし、」
「ごめんね、お婆さん。
どんな人も、家へは、入れちゃいけないのよ……」
「お留守番かい? 偉いねぇ!
さぁ、真っ赤に熟れてる林檎[Apfel(アッフェル)]。お前さんに1つあげよう、ほれ!」
「ごめんね、お婆さん。
いらない。私何も、貰っちゃいけないのよ……」
「あらまぁ、心配症だねえ!
そうとなりゃ、抱いてる疑惑[Zweifel(ツヴァイフェル)]。この婆と2つに分けよう!」
抗えない 誘ってる悪魔[Teufel(トォイフェル)] 7つめの罪は蜜の味
「いただきます…。」
「いただきまーす!…うっ」
「キッヒッヒッヒ!」
「鏡よ鏡……此の世界で一番、美しいのは、誰なのかしら?」
「其れは貴女――《王妃様》[die Königin(ディケニギン)]!」
「ホッホッホッホッホッホッホ!」
「成る程。それで君は騙されたわけだね?
ならば、ある男の特殊な性癖を君の復讐に利用してみようか
さあ、もう暫し。運命の相手は夢の世界で待つものさ」
僕の理想の花嫁は 何処に居るのだろう?
嗚呼 西も東も 北も南も 雨にも負けず 風にも負けず
捜したけれど 見つからないのさ
未来に開く 少女も 過去に開いた 老婆も
蕾も花も 生きとし生ける 全ての女性(ひと)を 愛でても尚 見つからない
宵闇の迫る陰が 進む道を呑み込んでゆく
迷い込んだ見知らぬ森の 小さな可愛いお家
儘、閉ざされた硝子の中で、
眠るように死んでる君は、
誰よりも、嗚呼、美しい。
やっと、見つけたよ!
「《小人》[Zwerge(ツヴェルク]達よ、その死体を私に譲ってはくれないかな?」
「こいつ」
「どう」
「見ても」
「王」
「子」
「様」
「だし」
「「「いいんじゃね?」」」
「さあ、もうすぐあのフードがやらかすぞ」
「お前たち、くれぐれも慎重に運ぶように」
「「はい、殿下!」」
「心の準備はよろしいかな?お姫様」
「うお!」「ああーっ!」
「ぐーてん☆もるげん!」
「「うわあー!」」
「さあ、復讐劇の始まりだ!」
魔性のは肌は白く 黒曜の髪は黒く
焔のように赤い唇
妬いたのが お前の罪なら
灼けた靴で――
死 ぬ 迄 踊 れ !
「さ!ほれ!」
「あうっ…は、ひぃ」
「きゃははっ! あははっ! あーはっはっは!
なーにそれえ! もっと上手に踊ってくださらない?
せっかくの可愛い娘の婚礼なのよお? あーはっはっは!」
「ああ!あちちち!アァー!アチチ!!あ、あぁーーー!!」
「なんてことだ…」
「鏡よ鏡、メル鏡。この世界で一番可愛いのは誰かしら?ウフフ!」
「勿論、それはエリーゼ姫さ」
「本当!?嬉しい!アハハハハ!」
05.生と死を別つ境界の古井戸
怠惰[Trägheit(トゥァラァクハイト)]
「おや、君も落ちてしまったのかい?
初対面の筈だが、この奇妙な親近感は、一体何処からやってくるのだろうね。
まぁいい。君は何故生と死を別つこの境界を、越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん?」
「キッケリキー」
陽が昇り 嗚呼 汗塗れ 炊事洗濯全て 私の仕事
嗚呼 意地悪な 寡婦<はは>の口癖
「追い出されたいのかい?この愚図っ!」
なんて言うけれど――
私は今日も お父さん[Vati(ファティ)] 頑張っているよ!
陽が落ちて 嗚呼 塵まみれ 炊事洗濯全て 押し付けた
嗚呼 性悪な 妹の口癖
「言い付けられたいのかい?この愚図っ!」
なんて言うけれど――
私は明日も お父さん[Vati(ファティ)] 頑張ってみるよ!
「父は舟乗りだったのに、何故か井戸に落ちて死んだらしい。
だから私は、あまり井戸が好きではない。
それでも継母は、容赦などしないのだ……。」
井戸の傍で、糸を紡ぐ、指先はもう……
嗚呼、擦り切れて緋い血を出して、
紅く糸巻きを染め上げたから
洗い流そうと井戸を覗き込んだら、
水に焦がれる魚のように手から飛び出して、
その糸巻きは、井戸の底に沈んだ。
悲恋に嘆く乙女[Loreley(ローレライ)]、正にそんな勢いで――
泣きながら帰った私に容赦なく、継母は言い放った――
「この愚図っ!潜ってでも取ってきなっ!じゃなきゃ晩飯は抜きさっ!」
「この愚図っ!」 「取ってきなっ! 「晩飯は~抜きさっ!」
道急ぐ背中に、宵闇が迫っていた……
「どうしよっ、お父さん[Vati(ファティ)]!最悪、そっちに行きます!セイッ!」
(3…2…1…[drei…zwei…eins(ドライ ツヴァイ アインス)])
「なるほど、君も中々健やかに悲惨な子だねぇ。
復讐に迷いがあるのなら、時間をあげよう。
この教会の古井戸の中で、もうしばし、
憾みについて考えてみるといい」
目覚めれば綺麗な草原。
幾千の花が咲き誇る。
異土へ至る井戸の中で、衝動(イド)を抱いた男(イド)に遇って、
彼の指揮で憾み唄った。私は――
死んじゃったの?天国なの?気の【ceui】(セイ)なの?分からないわ。
大丈夫!でも私は頑張るよ!お父さん[Vati(ファティ)]、何時だって!
「こまっちゃった。あたしを、ひっぱりだしてぇ。ひっぱりだしてぇ。
もう、とっくのむかしにやけてるんだよぅ」
「マジでぇ?」
「こまっちゃった。ぼくを、ゆすぶってぇ。ゆすぶってぇ。
もう、みんなじゅくしきってるんだよぅ」
「わお!」
喋るパンの願いを聞いて
シャベルで全部 掻き出してあげたわ
「いぇい☆」
そして――
ひとつ残らず 実が落ちるまで 林檎の木を揺らし
その後――
散らばる林檎を 積み上げるだけの 簡単なお仕事
「ふぅーっ☆」
「Base!(バース)」
「しゅびどぅびどぃびどぅー」
「Gitarre!(ギターレ)」
「Klavier(クラヴィーア)!」
「Danke schoen(ダンケシェーン)!!」
「元気のいい子だねぇ…」
「キャー!」
「アハハハハハッ、怖がらなくていいのよ」
「あっ、貴女は、ひょっとしてあの、
お伽話によく出てくる、ホレおばさん!?」
「まぁ、口の悪い子ねぇ。おばさんじゃなくて、お姉さん、とお呼びなさい。」
「形あるモノは、いつか必ず崩れ、
命あるモノは、いずれ死を迎えるのさ
これまで、よく頑張ったね。お前は強い娘だね。
でもこれからは、私のもとで働くなら、きっと幸せになれるわ!」
「うんっ、私頑張るっ!」
嗚呼 綺麗に舞い散る羽ぶとん 振るうのが新たな私の仕事
嗚呼 地上に舞い落ちる雪の花 降るのは灼かな私の仕業
「キミが、もし冬に逢いたくなったら、私に言ってねぇん?」
「あいたっ!」
「これ!調子に乗るんじゃありません!
けれどまぁ、あなたも今日まで、陰日向無くよく働いてくれたわ。
帰郷の願い、特別に叶えてあげましょう。ホレッ!」
大きな門が開くと 黄金(きん)の雨が降ってきて
あっという間に 全身 覆った……
「それは君の働きに対する報酬だ。
まぁ、遠慮なく貰っておきたまえ。
もっとも、君の勤務態度が不真面目だった場合、
別のものが降ってきていたのかもしれない……」
「キッケリキー!うちの、黄金(きん)のお嬢様のお帰りだよぅ」
「ただいまぁーっ!」
日が替わり 嗚呼 黄金(きん)塗れ 炊事洗濯全て やらなくて良い!
嗚呼 低能な 継母の入れ知恵
「貴女も貰っておいで《可愛い実子》(チビちゃん)!」
「うん、あたい、がんばる…」
なんて言うけれど――
やれるものなら どうぞ 頑張っておいで!
「さぁ、復讐劇の始まりだ!」
「キッケリキー!うちの、バッチィのお嬢様のお帰りだよぅ」
「うう…。えっくえっく。」
日が過ぎて 嗚呼 瀝青(チャン)塗れ
ほら 怠惰な態度が 貴女の罪よ 自業自得だわ ねぇ――
これからは貴女も 必死に頑張ってみなよ!
「やだ!取れない!取れないよ!やだやだやだ取って!取ってよムッティ!」
「ああ、可哀想に・・・」
「やだ取って取ってよ!やだやだやだ!」
「あら、いいじゃない。お似合いよ、チビちゃん!あははははっ!
「取れない!やだやだ!取ってよ!」
「こんな良い子が、どうしてこんな酷い目に!?」
「やだー!」
「あはははは。」
「今回は随分とかわいい復讐だったねぇ」
「あらぁ、一生チャンまみれなんて、
女の子に取っては死ぬより辛い罰だわぁ!アッハハハハ!」
「おや、君も落ちてしまったのかい?
初対面の筈だが、この奇妙な親近感は、一体何処からやってくるのだろうね。
まぁいい。君は何故生と死を別つこの境界を、越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん?」
「キッケリキー」
陽が昇り 嗚呼 汗塗れ 炊事洗濯全て 私の仕事
嗚呼 意地悪な 寡婦<はは>の口癖
「追い出されたいのかい?この愚図っ!」
なんて言うけれど――
私は今日も お父さん[Vati(ファティ)] 頑張っているよ!
陽が落ちて 嗚呼 塵まみれ 炊事洗濯全て 押し付けた
嗚呼 性悪な 妹の口癖
「言い付けられたいのかい?この愚図っ!」
なんて言うけれど――
私は明日も お父さん[Vati(ファティ)] 頑張ってみるよ!
「父は舟乗りだったのに、何故か井戸に落ちて死んだらしい。
だから私は、あまり井戸が好きではない。
それでも継母は、容赦などしないのだ……。」
井戸の傍で、糸を紡ぐ、指先はもう……
嗚呼、擦り切れて緋い血を出して、
紅く糸巻きを染め上げたから
洗い流そうと井戸を覗き込んだら、
水に焦がれる魚のように手から飛び出して、
その糸巻きは、井戸の底に沈んだ。
悲恋に嘆く乙女[Loreley(ローレライ)]、正にそんな勢いで――
泣きながら帰った私に容赦なく、継母は言い放った――
「この愚図っ!潜ってでも取ってきなっ!じゃなきゃ晩飯は抜きさっ!」
「この愚図っ!」 「取ってきなっ! 「晩飯は~抜きさっ!」
道急ぐ背中に、宵闇が迫っていた……
「どうしよっ、お父さん[Vati(ファティ)]!最悪、そっちに行きます!セイッ!」
(3…2…1…[drei…zwei…eins(ドライ ツヴァイ アインス)])
「なるほど、君も中々健やかに悲惨な子だねぇ。
復讐に迷いがあるのなら、時間をあげよう。
この教会の古井戸の中で、もうしばし、
憾みについて考えてみるといい」
目覚めれば綺麗な草原。
幾千の花が咲き誇る。
異土へ至る井戸の中で、衝動(イド)を抱いた男(イド)に遇って、
彼の指揮で憾み唄った。私は――
死んじゃったの?天国なの?気の【ceui】(セイ)なの?分からないわ。
大丈夫!でも私は頑張るよ!お父さん[Vati(ファティ)]、何時だって!
「こまっちゃった。あたしを、ひっぱりだしてぇ。ひっぱりだしてぇ。
もう、とっくのむかしにやけてるんだよぅ」
「マジでぇ?」
「こまっちゃった。ぼくを、ゆすぶってぇ。ゆすぶってぇ。
もう、みんなじゅくしきってるんだよぅ」
「わお!」
喋るパンの願いを聞いて
シャベルで全部 掻き出してあげたわ
「いぇい☆」
そして――
ひとつ残らず 実が落ちるまで 林檎の木を揺らし
その後――
散らばる林檎を 積み上げるだけの 簡単なお仕事
「ふぅーっ☆」
「Base!(バース)」
「しゅびどぅびどぃびどぅー」
「Gitarre!(ギターレ)」
「Klavier(クラヴィーア)!」
「Danke schoen(ダンケシェーン)!!」
「元気のいい子だねぇ…」
「キャー!」
「アハハハハハッ、怖がらなくていいのよ」
「あっ、貴女は、ひょっとしてあの、
お伽話によく出てくる、ホレおばさん!?」
「まぁ、口の悪い子ねぇ。おばさんじゃなくて、お姉さん、とお呼びなさい。」
「形あるモノは、いつか必ず崩れ、
命あるモノは、いずれ死を迎えるのさ
これまで、よく頑張ったね。お前は強い娘だね。
でもこれからは、私のもとで働くなら、きっと幸せになれるわ!」
「うんっ、私頑張るっ!」
嗚呼 綺麗に舞い散る羽ぶとん 振るうのが新たな私の仕事
嗚呼 地上に舞い落ちる雪の花 降るのは灼かな私の仕業
「キミが、もし冬に逢いたくなったら、私に言ってねぇん?」
「あいたっ!」
「これ!調子に乗るんじゃありません!
けれどまぁ、あなたも今日まで、陰日向無くよく働いてくれたわ。
帰郷の願い、特別に叶えてあげましょう。ホレッ!」
大きな門が開くと 黄金(きん)の雨が降ってきて
あっという間に 全身 覆った……
「それは君の働きに対する報酬だ。
まぁ、遠慮なく貰っておきたまえ。
もっとも、君の勤務態度が不真面目だった場合、
別のものが降ってきていたのかもしれない……」
「キッケリキー!うちの、黄金(きん)のお嬢様のお帰りだよぅ」
「ただいまぁーっ!」
日が替わり 嗚呼 黄金(きん)塗れ 炊事洗濯全て やらなくて良い!
嗚呼 低能な 継母の入れ知恵
「貴女も貰っておいで《可愛い実子》(チビちゃん)!」
「うん、あたい、がんばる…」
なんて言うけれど――
やれるものなら どうぞ 頑張っておいで!
「さぁ、復讐劇の始まりだ!」
「キッケリキー!うちの、バッチィのお嬢様のお帰りだよぅ」
「うう…。えっくえっく。」
日が過ぎて 嗚呼 瀝青(チャン)塗れ
ほら 怠惰な態度が 貴女の罪よ 自業自得だわ ねぇ――
これからは貴女も 必死に頑張ってみなよ!
「やだ!取れない!取れないよ!やだやだやだ取って!取ってよムッティ!」
「ああ、可哀想に・・・」
「やだ取って取ってよ!やだやだやだ!」
「あら、いいじゃない。お似合いよ、チビちゃん!あははははっ!
「取れない!やだやだ!取ってよ!」
「こんな良い子が、どうしてこんな酷い目に!?」
「やだー!」
「あはははは。」
「今回は随分とかわいい復讐だったねぇ」
「あらぁ、一生チャンまみれなんて、
女の子に取っては死ぬより辛い罰だわぁ!アッハハハハ!」
06.薔薇の塔で眠る姫君
傲慢[Hochmut(オウモォルト)]
「呪いと祝いの境界。乙女が落ちた闇。深い微睡みの中。
「薔薇の塔。眠る姫君。君は何故、この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん。」
微睡みの森に踊る 百の孤独と
月影に蝶は朽ちて 死の夢を見る
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
野ばらに抱かれて 眠る理由は――
水浴びた妃<母>が聴いたのは 身籠もり告げし 蛙の声
「お望みの御子が、一年経たずに、お生まれになるでしょう」「まあ…!」
歓びて王(父)が催したのは 姫<私>の誕生 祝う宴
黄金の皿が 一枚足りずに 事件は起こってしまった……
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
恋も知らずに 死せる処女(おとめ)が
(ズィープトゥ シュールト)
野ばらに抱かれて 眠る理由は――
「おーよくぞ参った」「よく来てくれましたね。」
「お招きいただき光栄ですわ陛下。姫様へのお祝いに余徳をお送り致しましょう」
「私は美貌を!」
「それでは私は富を」
「では私からは…」
「あぁら!これはこれは皆様お揃いで。」
「「おぉ!」」「まぁ、なぜあなたが」
「今宵もご機嫌麗しいようで結構ですこと。」
「まぁ」
「オッホッホッホ!
全く、いい面の皮だね!!」
「失礼な!」
「国中に散らばる、神通力を持つ賢女達を全て、招いておきながら…
私だけ招かぬ傲慢なる王よ、祝いの宴席に呪いを添えてやろう!」
「呪いと祝いの境界。乙女が落ちた闇。深い微睡みの中。
「薔薇の塔。眠る姫君。君は何故、この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん。」
微睡みの森に踊る 百の孤独と
月影に蝶は朽ちて 死の夢を見る
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
野ばらに抱かれて 眠る理由は――
水浴びた妃<母>が聴いたのは 身籠もり告げし 蛙の声
「お望みの御子が、一年経たずに、お生まれになるでしょう」「まあ…!」
歓びて王(父)が催したのは 姫<私>の誕生 祝う宴
黄金の皿が 一枚足りずに 事件は起こってしまった……
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
恋も知らずに 死せる処女(おとめ)が
(ズィープトゥ シュールト)
野ばらに抱かれて 眠る理由は――
「おーよくぞ参った」「よく来てくれましたね。」
「お招きいただき光栄ですわ陛下。姫様へのお祝いに余徳をお送り致しましょう」
「私は美貌を!」
「それでは私は富を」
「では私からは…」
「あぁら!これはこれは皆様お揃いで。」
「「おぉ!」」「まぁ、なぜあなたが」
「今宵もご機嫌麗しいようで結構ですこと。」
「まぁ」
「オッホッホッホ!
全く、いい面の皮だね!!」
「失礼な!」
「国中に散らばる、神通力を持つ賢女達を全て、招いておきながら…
私だけ招かぬ傲慢なる王よ、祝いの宴席に呪いを添えてやろう!」
「呪いを」「呪いを」「呪いを」「呪いを」
「姫が抱く運命、僅か余命十五年。
紡錘(つむ)にさされて、床に倒れて、死ぬがいい!」
「いいえ―」
「《十三人目の賢女》[alte rose(アルテローゼ)]よ。不吉な言の葉。退けよう。
百年。死んだと見せて、寝台の上、唯、眠るだけ!」
「ならば、どちらの力が、上回っているか、嗚呼、流る時のみぞ識る……」
「十五年後が楽しみだねぇ、アプリコーゼ?」
「うふふ、どうかしら?」
「オッホッホッホッホッホッホ!」
朝と夜は繰り返す。
望もうとも、望まざろうとも。
光陰は矢の如く過ぎ去り、大樹にも幾つかの年輪を刻む。
齢十五の朝を迎えることとなった、そんな私が……
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
野ばらに抱かれて 眠る理由は――
「ドキドキだわ…」
燭台の揺れる焔 仄昏い闇を照らす 石壁の部屋を廻り 古い塔へ上がる
狭い螺旋型(ねじ)の 階段を昇ると 部屋の中 独り 老婆が麻を紡いでいた
「こんにちは、お婆さん。ここで何してるの?」
「糸を取っておりますのじゃ」
「じゃあ、それなぁに?面白そうに、ぐるぐる跳ね回っている物!?
あっ!…なに…んん」
「なるほど、それで君は野ばらに抱かれた訳だね。
目覚めへと至る、口づけが欲しいのかい?
だが、残念ながら私は君の王子様じゃない!
さあ、もう暫し。運命の相手は、夢の世界で待つものさ」
僕の理想の花嫁は 何処にいるのだろう?
嗚呼 西も東も 北も南も 雨にも負けず 風にも負けず
捜したけれど 見つからない……と思ってた矢先に
素晴らしい 噂を聞いた――
~野ばらの生垣に 抱かれた白亜の城
空を望む薔薇の塔 眠る美しい姫君~
嗚呼 唯 野ばら姫の伝説(言い伝え)を 聞いただけで 運命 感じた
彼女こそが きっと僕の 《捜し求めていた女性》[Els(エルス)]なのだろう
ならば どんな困難も 乗り越えてみせよう!
迷いの森の 霧が晴れてゆく
僕を誘ってくれるのか?愛しい姫のもとへ
棘の生垣が 口を開けてゆく
僕を導いてくれるのか?愛しい彼女のもとへと――
燭台の揺れる焔、微睡んだ闇を照らす。
石壁の部屋を飛ばし、古い塔へ上がる。
狭い螺旋型(ねじ)の階段を上ると――
部屋の中、独り、乙女が横臥っていた……。
「さぁ、姫よ。心の準備はよろしいかな?」
「いただきます」
「ん~んっ」
「復讐劇の始まりだ!」
予定調和な王子の接吻で姫が目覚めると、
役割を終えた野ばらは、立ち所に立ち枯れて朽ち果て、
長過ぎる午睡を貪っていた城の愉快な面々も、
何事も無かったかのように、彼等の愉快な日常を再開した。
「見てよぉ、こんなのホンット眠れなくてさぁ」
「ほんと、変…」
「ギャーッ!」
「なんべん言ったら分かんだ小僧!」
「さぁ~、観念なさい子猫ちゃん!」 「ぎゃー」
「おお!?何だ!?生き返ってる!あぁ・・また…!」
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
気高き王女を呪うなんて 傲慢なのはお前の方よ
「誰ぞ!アルテローゼを捕らえよ!」「「はっ!」」
「もう二度とこの国の土を踏めぬものと思え!」
「野ばら姫よ!
忘れるな、置き土産にもう一つ呪いをくれてやろう!ふっはは…あーはっはっは!」
「静まれ!」
――そして彼女は、
生まれた姫を森に捨てることとなる……。
「アレハ転ンデモ、タダジャ起キナイ女ネ」
「ご婦人方の矜持を傷付けると、恐ろしいことになるんだね。」
「アラァ、当然ヨ!」
「姫が抱く運命、僅か余命十五年。
紡錘(つむ)にさされて、床に倒れて、死ぬがいい!」
「いいえ―」
「《十三人目の賢女》[alte rose(アルテローゼ)]よ。不吉な言の葉。退けよう。
百年。死んだと見せて、寝台の上、唯、眠るだけ!」
「ならば、どちらの力が、上回っているか、嗚呼、流る時のみぞ識る……」
「十五年後が楽しみだねぇ、アプリコーゼ?」
「うふふ、どうかしら?」
「オッホッホッホッホッホッホ!」
朝と夜は繰り返す。
望もうとも、望まざろうとも。
光陰は矢の如く過ぎ去り、大樹にも幾つかの年輪を刻む。
齢十五の朝を迎えることとなった、そんな私が……
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
野ばらに抱かれて 眠る理由は――
「ドキドキだわ…」
燭台の揺れる焔 仄昏い闇を照らす 石壁の部屋を廻り 古い塔へ上がる
狭い螺旋型(ねじ)の 階段を昇ると 部屋の中 独り 老婆が麻を紡いでいた
「こんにちは、お婆さん。ここで何してるの?」
「糸を取っておりますのじゃ」
「じゃあ、それなぁに?面白そうに、ぐるぐる跳ね回っている物!?
あっ!…なに…んん」
「なるほど、それで君は野ばらに抱かれた訳だね。
目覚めへと至る、口づけが欲しいのかい?
だが、残念ながら私は君の王子様じゃない!
さあ、もう暫し。運命の相手は、夢の世界で待つものさ」
僕の理想の花嫁は 何処にいるのだろう?
嗚呼 西も東も 北も南も 雨にも負けず 風にも負けず
捜したけれど 見つからない……と思ってた矢先に
素晴らしい 噂を聞いた――
~野ばらの生垣に 抱かれた白亜の城
空を望む薔薇の塔 眠る美しい姫君~
嗚呼 唯 野ばら姫の伝説(言い伝え)を 聞いただけで 運命 感じた
彼女こそが きっと僕の 《捜し求めていた女性》[Els(エルス)]なのだろう
ならば どんな困難も 乗り越えてみせよう!
迷いの森の 霧が晴れてゆく
僕を誘ってくれるのか?愛しい姫のもとへ
棘の生垣が 口を開けてゆく
僕を導いてくれるのか?愛しい彼女のもとへと――
燭台の揺れる焔、微睡んだ闇を照らす。
石壁の部屋を飛ばし、古い塔へ上がる。
狭い螺旋型(ねじ)の階段を上ると――
部屋の中、独り、乙女が横臥っていた……。
「さぁ、姫よ。心の準備はよろしいかな?」
「いただきます」
「ん~んっ」
「復讐劇の始まりだ!」
予定調和な王子の接吻で姫が目覚めると、
役割を終えた野ばらは、立ち所に立ち枯れて朽ち果て、
長過ぎる午睡を貪っていた城の愉快な面々も、
何事も無かったかのように、彼等の愉快な日常を再開した。
「見てよぉ、こんなのホンット眠れなくてさぁ」
「ほんと、変…」
「ギャーッ!」
「なんべん言ったら分かんだ小僧!」
「さぁ~、観念なさい子猫ちゃん!」 「ぎゃー」
「おお!?何だ!?生き返ってる!あぁ・・また…!」
【七の罪科】[Siebte Schuld(ズィープトゥ シュールト)]
気高き王女を呪うなんて 傲慢なのはお前の方よ
「誰ぞ!アルテローゼを捕らえよ!」「「はっ!」」
「もう二度とこの国の土を踏めぬものと思え!」
「野ばら姫よ!
忘れるな、置き土産にもう一つ呪いをくれてやろう!ふっはは…あーはっはっは!」
「静まれ!」
――そして彼女は、
生まれた姫を森に捨てることとなる……。
「アレハ転ンデモ、タダジャ起キナイ女ネ」
「ご婦人方の矜持を傷付けると、恐ろしいことになるんだね。」
「アラァ、当然ヨ!」
07.青き伯爵の城
色欲[Wollust(ヴォルスト)]
「宵闇に朽ちた楽園。 吊された屍達。
君は何故この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん」
「フハハハハ!ハーハッハッハハハァ!!」
朧気な...記憶を...辿って...
曖昧な...自分を...描いた...
どんな...顔で...笑い...どんな...声で...歌ったのか...
お気に入りの...白い...華飾衣[Kleid(クライト)]が...何故...こんなに...緋いのか...
嗚呼…そうだ…私は…
彼に…殺されたんだっ…た……
伯爵は何時からか 青髭と呼ばれていた
私が嫁いだ時分には もう既に呼ばれていた
あんなにも優しい眼差しが 昏い色を帯びたのは
染み付いた鉄の匂いと 血の匂いのせいかしら?
嗚呼 夫は私を愛してない 気付かない振りしてきたけれど
もう これ以上は偽れない 私は誰よりも愛していたから
過ぎ去った季節の 長い夜の中で 貴方の瞳の奥で
抱かれていたのは 愛されていたのは 本当は誰なのかしら?
決して戻せない季節も 長い闇の中で 禁じられた部屋の奥で
寂しさ埋めるように 虚しさ燃やすように 不貞(いろ)の罪を重ねた嗚呼……
誓いを破られたことに腹を立てたからなのか、
愛していたからなのか、今ではもう判らない。
最初の妻を殺したとき、理性も共に死んだのか、
新しい妻を娶っては犯し、犯しては殺した……。
<二人目>鞭
「やめて(あなた?)!」
「ふんっ!」
「やめてぇ!」
「ふははは!」
「気持ちいいか?」
「あぁ!」
「ふん!跪け!」
<三人目>絞殺
「この雌豚め!」
「ねぇ、の方」
「座れ!!」
「あっ!あぁあ・・・」
「くっ!ふははは!」
<四人目>銃殺
「ぐふははは!」
「あぁ!ごめんなさい!!」
「さぁ、楯突け」
「ああぁ!」
<五人目>焼死
「だれかぁ・・・いやぁいやだぁ」
「あぁん?」
「いやぁぁ…!」
「そうだ!泣け!喚け!!」
「あぁ!」
「ふはは!」
<六人目>水死
「ひぃいや!」
「ふははは」
「ぐぇ…」
どれ程 信じて祈っても 救ってなどくれなかった……
例え相対者(相手)が神でも 唯 穴[Loch(ロッホ)]さえあれば 嗚呼 貫いてくれよう……
《私の槍で》[Longinus(ロンギヌス)]!
「君を魔女として断罪した、恩知らずな豚共を、
私は赦しはせぬぞ!」
「なるほど。それで君は…いや、君達は吊された訳だね。
この禁じられた秘密の部屋に。
流された血は、宵闇に流される血で贖うのさ。
さぁ、復讐劇を始めようか」
彼の留守の間に 宝部屋を回る
開けたことのない 部屋が気になっている
娘の耳元で 私はこう囁いた――
「黄金(きん)の鍵の、禁じられた部屋には、
取って置きの宝物が隠されているわ……」
そう その鍵穴に 挿れたら 回せばいい
もう すぐ出ちゃうでしょ 私達の【屍体と衝動(イド)】
「きゃあああああああああああ!」
嗚呼 女が本当に抱いて欲しいのは 肢体(からだ)ではなく魂(こころ)なのよ
罪な人ね でも 愛しい人よ
哀しみは 憎しみじゃ 決して癒せないわ
宵闇に唄が 響くだけ
貴方の喜劇を今 終わりにしよう!
「秘密の部屋の鍵は何処だ?」
「はて、何のこと?」
「ほほう、私の命令に背いたか」「えっ!?」
「よかろう、そんな見たければいっそくれてやる。今日からお前もあの部屋の置物だ!」
「せめて!死ぬ前にお祈りをさせてくださいませ…!」
「ハハハ、よかろう」
「助けて!兄さん!」
「まだか、早くしろ!」
「早くするのだ!」
「ええい!もう我慢ならん!」
「ひぃ!いやあああああああ!」
「ぐおお!」
「えいや!」「ていや!」
「兄さん!」
「くたばれ!青髭!」
「ぐはははぁ…」
「くっ!ぐぅ…」
「なんだと!くそ、化け物か」
「コイツっ!」
「ぐはぁ…」
「お兄さん!」「ガラン!」
「さあ、こっちへ!」
「ひぃ、なんでこんなことに…」
「ぐぁぁぁ―!」
「グフフフ…」
「はぁ!はぁ!」
「がはぁ…。」
「復讐というのも、歪な愛情の形なのかもしれないね。」
「それでも、何故人間て愛と性欲を切り離せないのかしら。
気持ち悪いわぁ!」
「宵闇に朽ちた楽園。 吊された屍達。
君は何故この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん」
「フハハハハ!ハーハッハッハハハァ!!」
朧気な...記憶を...辿って...
曖昧な...自分を...描いた...
どんな...顔で...笑い...どんな...声で...歌ったのか...
お気に入りの...白い...華飾衣[Kleid(クライト)]が...何故...こんなに...緋いのか...
嗚呼…そうだ…私は…
彼に…殺されたんだっ…た……
伯爵は何時からか 青髭と呼ばれていた
私が嫁いだ時分には もう既に呼ばれていた
あんなにも優しい眼差しが 昏い色を帯びたのは
染み付いた鉄の匂いと 血の匂いのせいかしら?
嗚呼 夫は私を愛してない 気付かない振りしてきたけれど
もう これ以上は偽れない 私は誰よりも愛していたから
過ぎ去った季節の 長い夜の中で 貴方の瞳の奥で
抱かれていたのは 愛されていたのは 本当は誰なのかしら?
決して戻せない季節も 長い闇の中で 禁じられた部屋の奥で
寂しさ埋めるように 虚しさ燃やすように 不貞(いろ)の罪を重ねた嗚呼……
誓いを破られたことに腹を立てたからなのか、
愛していたからなのか、今ではもう判らない。
最初の妻を殺したとき、理性も共に死んだのか、
新しい妻を娶っては犯し、犯しては殺した……。
<二人目>鞭
「やめて(あなた?)!」
「ふんっ!」
「やめてぇ!」
「ふははは!」
「気持ちいいか?」
「あぁ!」
「ふん!跪け!」
<三人目>絞殺
「この雌豚め!」
「ねぇ、の方」
「座れ!!」
「あっ!あぁあ・・・」
「くっ!ふははは!」
<四人目>銃殺
「ぐふははは!」
「あぁ!ごめんなさい!!」
「さぁ、楯突け」
「ああぁ!」
<五人目>焼死
「だれかぁ・・・いやぁいやだぁ」
「あぁん?」
「いやぁぁ…!」
「そうだ!泣け!喚け!!」
「あぁ!」
「ふはは!」
<六人目>水死
「ひぃいや!」
「ふははは」
「ぐぇ…」
どれ程 信じて祈っても 救ってなどくれなかった……
例え相対者(相手)が神でも 唯 穴[Loch(ロッホ)]さえあれば 嗚呼 貫いてくれよう……
《私の槍で》[Longinus(ロンギヌス)]!
「君を魔女として断罪した、恩知らずな豚共を、
私は赦しはせぬぞ!」
「なるほど。それで君は…いや、君達は吊された訳だね。
この禁じられた秘密の部屋に。
流された血は、宵闇に流される血で贖うのさ。
さぁ、復讐劇を始めようか」
彼の留守の間に 宝部屋を回る
開けたことのない 部屋が気になっている
娘の耳元で 私はこう囁いた――
「黄金(きん)の鍵の、禁じられた部屋には、
取って置きの宝物が隠されているわ……」
そう その鍵穴に 挿れたら 回せばいい
もう すぐ出ちゃうでしょ 私達の【屍体と衝動(イド)】
「きゃあああああああああああ!」
嗚呼 女が本当に抱いて欲しいのは 肢体(からだ)ではなく魂(こころ)なのよ
罪な人ね でも 愛しい人よ
哀しみは 憎しみじゃ 決して癒せないわ
宵闇に唄が 響くだけ
貴方の喜劇を今 終わりにしよう!
「秘密の部屋の鍵は何処だ?」
「はて、何のこと?」
「ほほう、私の命令に背いたか」「えっ!?」
「よかろう、そんな見たければいっそくれてやる。今日からお前もあの部屋の置物だ!」
「せめて!死ぬ前にお祈りをさせてくださいませ…!」
「ハハハ、よかろう」
「助けて!兄さん!」
「まだか、早くしろ!」
「早くするのだ!」
「ええい!もう我慢ならん!」
「ひぃ!いやあああああああ!」
「ぐおお!」
「えいや!」「ていや!」
「兄さん!」
「くたばれ!青髭!」
「ぐはははぁ…」
「くっ!ぐぅ…」
「なんだと!くそ、化け物か」
「コイツっ!」
「ぐはぁ…」
「お兄さん!」「ガラン!」
「さあ、こっちへ!」
「ひぃ、なんでこんなことに…」
「ぐぁぁぁ―!」
「グフフフ…」
「はぁ!はぁ!」
「がはぁ…。」
「復讐というのも、歪な愛情の形なのかもしれないね。」
「それでも、何故人間て愛と性欲を切り離せないのかしら。
気持ち悪いわぁ!」
08.磔刑の聖女
憤怒[Zorn(ゾーンヌ)]
「参詣の途絶えた教会[Kirche(キルヒェ)。
旅歩きの[Geige Spieler(ガイゲンシュピァ)]。
御像となった磔の聖女。
君は何故、この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん」
「さぁ、お父上がお待ちです」
鈍色の足取り 決意で進める
背中に風を感じて 一度だけ振り返る
宵闇の匂いは 不思議と懐かしく
背中を押してくれる そう そんな気さえしたわ
押し寄せる 悲しみに 独り震えて 指でなぞる 遥か遠い約束
沸き上がる 憎しみの 脆く歪な 刻の果てに 闇を見つめ接吻(くちづけ)
嗚呼 虚ろな儘 移ろう儘 歪な 嗚呼 罪を集め接吻(くちづけ)
今 でも 忘れ られない
今 尚 憶いだせない
「殿下、お嬢様をお連れいたしました」
「ふむ、エリーザベト。喜べ!はっはっはっ!
お前の結婚相手が決まったぞ!
求婚してきたのはラインプファルツだ。行き遅れには願ってもない相手だろう?」
「お言葉ですがお兄様」
「お父様と呼べと何度言ったら分かるんだ」
「いいえお兄様、私はどなたのもとにも嫁ぐ気はございません!」
愛を偽って生きるくらいなら
真実と共に死すことも厭わないわ
二人で見つけた野ばらが
君を包むことを願って墓標の周りに植えたけど
結局 遂の終まで咲く事はなかったね……
月光に恋をした鳥籠の白い鳥は、
地に堕ちると知りながら、最期まで羽ばたくよ。
だからこそ宵闇に唄うのは、憾みの唄じゃないわ……。
「ワルター、お前の母上が身分を偽ってまで守ろうとしたものの結果がこれだ。フハハハ!」
「殿下…」
「この馬鹿娘を磔にしろ」
「殿下!」
「成る程 それで君は磔にされた訳だね。
一途な想いを貫くのも結構だ。
果たして彼は、君の死と引き換えてまで、本当にそれを望むのかな?
まあいい。さぁ、復讐劇を始めようか」
「いえ。私は、そんなことを望んでなどいないわ。
人にはそれぞれ、背負うべき立場と、運命がある。
貴方が会いに来てくれた。私にはそれだけで十分。
ねえ、本当に覚えていないの?今尚眩い、あの日々さえも」
「…私、今とてもドキドキしているわ。
だって森は、世界はこんなに広いんですもの!」
「うん。」
「綺麗なお花。」
「わぁ、本当」
「つけてあげるよ。」
「本当?可愛くしてね。」
「似合うよ。」
「本当?」
「メル 絶対、絶対迎えにきてね!」
「ああ、約束さ」
「メル、そんなになってまで、約束を守ってくれたのね」
焔(ひかり)を無くした君を縛る 冷たい鎖は
「おお、聖女様!うっ…」
「おおなんてことを…」
「おお、まことであったか。これならば、聖女さまの罪を…」
愛(ひかり)を亡くした 君を想う二人の愛憎
鳥は空へ 屍体は土へ 摂理(かみ)を裏切り続けた
夜は明けて 終わりの朝へ 次の別離(わかれ)こそ永遠――
でも…
後悔などしていないわ 嗚呼 これが 私の人生
《門閥貴族の令嬢》[von Wettin(フォン ヴェッティン)] でも
《七選帝侯の息女》[von Sachsen(フォン ザクセン)]
でもないわ 私は《一人の女》[Elisabeth(エリーゼベト)]
唯 君だけを愛した――
唯の【Elisabeth】
「ナニヨメル、サッキカラオカシイワヨ、ドウシチャッタノ?
アンナ女ノ言ウコト、真ニ受ケチャダメヨ!
モウ忘レマショ!
復讐ヲ続ケナキャイケナイワ。
例エ何ガアッタトシテモ。ソレガ私達ノ存在理由デショ!?
ネェ、本当ニ分カッテルノ!?メル。
アアァ!モウ!ドウシテ分カッテクレナイノ!?メルノ分カラズ屋!
今ハモウ、私ダケガ貴方ノエリーゼナノヨ!?
コレマデ楽シクヤッテキタジャナイ!
二人デ色ンナ復讐、手伝ッテキタジャナイ!!
コレカラモキット楽シイワ。ソウヨ、ソウニ決マッテイルワ。
貴方ニハ私ガ、私ニハ貴方ガイルモノ!コノママ続ケヨウヨ!
ズット二人デ続ケヨウヨ!ネェ!!
ズット、ズットズットズット続ケヨウヨ!!
コノ世界ガ終ワルマデ、ウウン!コノ世界ガ終ワッテモ、
ズットズット一緒ニイヨウヨ!ネェ、イヤ、イヤヨメル、
イヤ、イヤイヤイヤアァ!!オ願イ、オ願イヨゥ、メル…イヤアアアアァ!!!…」
「もう、いいんだよ。エリーゼ。」
「参詣の途絶えた教会[Kirche(キルヒェ)。
旅歩きの[Geige Spieler(ガイゲンシュピァ)]。
御像となった磔の聖女。
君は何故、この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん」
「さぁ、お父上がお待ちです」
鈍色の足取り 決意で進める
背中に風を感じて 一度だけ振り返る
宵闇の匂いは 不思議と懐かしく
背中を押してくれる そう そんな気さえしたわ
押し寄せる 悲しみに 独り震えて 指でなぞる 遥か遠い約束
沸き上がる 憎しみの 脆く歪な 刻の果てに 闇を見つめ接吻(くちづけ)
嗚呼 虚ろな儘 移ろう儘 歪な 嗚呼 罪を集め接吻(くちづけ)
今 でも 忘れ られない
今 尚 憶いだせない
「殿下、お嬢様をお連れいたしました」
「ふむ、エリーザベト。喜べ!はっはっはっ!
お前の結婚相手が決まったぞ!
求婚してきたのはラインプファルツだ。行き遅れには願ってもない相手だろう?」
「お言葉ですがお兄様」
「お父様と呼べと何度言ったら分かるんだ」
「いいえお兄様、私はどなたのもとにも嫁ぐ気はございません!」
愛を偽って生きるくらいなら
真実と共に死すことも厭わないわ
二人で見つけた野ばらが
君を包むことを願って墓標の周りに植えたけど
結局 遂の終まで咲く事はなかったね……
月光に恋をした鳥籠の白い鳥は、
地に堕ちると知りながら、最期まで羽ばたくよ。
だからこそ宵闇に唄うのは、憾みの唄じゃないわ……。
「ワルター、お前の母上が身分を偽ってまで守ろうとしたものの結果がこれだ。フハハハ!」
「殿下…」
「この馬鹿娘を磔にしろ」
「殿下!」
「成る程 それで君は磔にされた訳だね。
一途な想いを貫くのも結構だ。
果たして彼は、君の死と引き換えてまで、本当にそれを望むのかな?
まあいい。さぁ、復讐劇を始めようか」
「いえ。私は、そんなことを望んでなどいないわ。
人にはそれぞれ、背負うべき立場と、運命がある。
貴方が会いに来てくれた。私にはそれだけで十分。
ねえ、本当に覚えていないの?今尚眩い、あの日々さえも」
「…私、今とてもドキドキしているわ。
だって森は、世界はこんなに広いんですもの!」
「うん。」
「綺麗なお花。」
「わぁ、本当」
「つけてあげるよ。」
「本当?可愛くしてね。」
「似合うよ。」
「本当?」
「メル 絶対、絶対迎えにきてね!」
「ああ、約束さ」
「メル、そんなになってまで、約束を守ってくれたのね」
焔(ひかり)を無くした君を縛る 冷たい鎖は
「おお、聖女様!うっ…」
「おおなんてことを…」
「おお、まことであったか。これならば、聖女さまの罪を…」
愛(ひかり)を亡くした 君を想う二人の愛憎
鳥は空へ 屍体は土へ 摂理(かみ)を裏切り続けた
夜は明けて 終わりの朝へ 次の別離(わかれ)こそ永遠――
でも…
後悔などしていないわ 嗚呼 これが 私の人生
《門閥貴族の令嬢》[von Wettin(フォン ヴェッティン)] でも
《七選帝侯の息女》[von Sachsen(フォン ザクセン)]
でもないわ 私は《一人の女》[Elisabeth(エリーゼベト)]
唯 君だけを愛した――
唯の【Elisabeth】
「ナニヨメル、サッキカラオカシイワヨ、ドウシチャッタノ?
アンナ女ノ言ウコト、真ニ受ケチャダメヨ!
モウ忘レマショ!
復讐ヲ続ケナキャイケナイワ。
例エ何ガアッタトシテモ。ソレガ私達ノ存在理由デショ!?
ネェ、本当ニ分カッテルノ!?メル。
アアァ!モウ!ドウシテ分カッテクレナイノ!?メルノ分カラズ屋!
今ハモウ、私ダケガ貴方ノエリーゼナノヨ!?
コレマデ楽シクヤッテキタジャナイ!
二人デ色ンナ復讐、手伝ッテキタジャナイ!!
コレカラモキット楽シイワ。ソウヨ、ソウニ決マッテイルワ。
貴方ニハ私ガ、私ニハ貴方ガイルモノ!コノママ続ケヨウヨ!
ズット二人デ続ケヨウヨ!ネェ!!
ズット、ズットズットズット続ケヨウヨ!!
コノ世界ガ終ワルマデ、ウウン!コノ世界ガ終ワッテモ、
ズットズット一緒ニイヨウヨ!ネェ、イヤ、イヤヨメル、
イヤ、イヤイヤイヤアァ!!オ願イ、オ願イヨゥ、メル…イヤアアアアァ!!!…」
「もう、いいんだよ。エリーゼ。」
09.暁光の唄
さようなら
ずっと 君と 同じ時間を 生きたかった
然れど 摂理(かみ)は 決して僕たちを赦さないだろう
幾つもの罪 重ねながらも 僕達が求めたのは――
其れは《恩寵》(ひかり) 其れは《愛情》(ひかり)
其れは《幸福》(ひかり) 其れは《未来》(ひかり)
暗闇の時代(とき)に生まれて 儘 君と出逢い
惹かれ合う 其の想い 死せる後も 止められずに
宵闇の唄を集めて 此の墓碑に捧ぐ
復讐は誰が為に モリも イドも 七の墓碑銘[Epitaph(エピタフ)]となる
「森の動物達だけだった……」
「うめぇだよ」
「いっただきまーす!」
「うんっ、私頑張るっ!」
「ドキドキだ」
「宝物が隠されているわ……」
「約束を守ってくれたのね」
「ウフフッ…愛してるわ、メル。」
「寒くない?メル」
「成る程…そうか…この骨が…この井戸が僕の…。
そうだね、エリーゼ…僕達の時代は、もう…終わったんだ…」
「キミが今笑っている、眩い其の時代に。
誰も恨まず、死せることを憾まず、必ず其処で逢おう」
7[sieben]
6[sechs]
5[fünf]
4[vier]
3[drei]
2[zwei]
1[eins]
「Mutti ひかり あったかいね」「お母さん[mutti(ムッティ)]。ひかり、あったかいね。」
ずっと 君と 同じ時間を 生きたかった
然れど 摂理(かみ)は 決して僕たちを赦さないだろう
幾つもの罪 重ねながらも 僕達が求めたのは――
其れは《恩寵》(ひかり) 其れは《愛情》(ひかり)
其れは《幸福》(ひかり) 其れは《未来》(ひかり)
暗闇の時代(とき)に生まれて 儘 君と出逢い
惹かれ合う 其の想い 死せる後も 止められずに
宵闇の唄を集めて 此の墓碑に捧ぐ
復讐は誰が為に モリも イドも 七の墓碑銘[Epitaph(エピタフ)]となる
「森の動物達だけだった……」
「うめぇだよ」
「いっただきまーす!」
「うんっ、私頑張るっ!」
「ドキドキだ」
「宝物が隠されているわ……」
「約束を守ってくれたのね」
「ウフフッ…愛してるわ、メル。」
「寒くない?メル」
「成る程…そうか…この骨が…この井戸が僕の…。
そうだね、エリーゼ…僕達の時代は、もう…終わったんだ…」
「キミが今笑っている、眩い其の時代に。
誰も恨まず、死せることを憾まず、必ず其処で逢おう」
7[sieben]
6[sechs]
5[fünf]
4[vier]
3[drei]
2[zwei]
1[eins]
「Mutti ひかり あったかいね」「お母さん[mutti(ムッティ)]。ひかり、あったかいね。」
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